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アイルランド問題入門 |
アイルランド問題のごく簡単な入門 イギリスの西にある島がアイルランド。意外とマイナーだけど。
アイルランドには4つの地方があり、全部で32州に分かれている。
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北部アルスター地方9州のうち、6州が実質的に「北アイルランド」として、イギリス連合王国内に含まれている(イギリスの正式名称は、「グレート・ブリテンならびに北アイルランド連合王国」である)。その他の26州が、現在のアイルランド国である。 北アイルランド問題は、この32州が分割されていることに原因がある。 |
アイルランド自治問題アイルランド島は12世紀以来、イングランドに征服されてきた。清教徒革命中には、クロムウェルの遠征によって土地を没収され,イングランド人の不在地主によって収奪された。宗教上・政治上の差別も加わったため,17〜18世紀にはしばしば反乱が起こり,そのたび激しい弾圧を受けた。1800年イギリス王国に併合。 ここで問題になったのが、現在の北アイルランドが、残りの26州と性質が大きく違っているということである。北アイルランドの住民はスコットランド系,ケルト系で,カトリック教徒が約3分の1。17世紀以降、スコットランド人の植民が行なわれ,人種的・宗教的に独自の地域を形成した。 1916年英国支配に抗してダブリンで武装蜂起があり,19年農民の武装闘争が始まった。北アイルランドは、1920年のアイルランド法,22年のアイルランド自由国法によって,南アイルランドから分離した。 よく出てくるので注記しておくが、イギリスの国会はその場所から「ウェストミンスター」と呼ばれる。そして、北部の議会は「ストーモント」(一時期、英国直轄領となっていたときには廃止されていた。それが復活しようとしている)。南部のアイルランド共和国議会は「レンスター議会」だ。 |
アイルランド問題に関する立場 さて、ここでアイルランド問題に対する立場を簡単にまとめておく。
アイルランドにおいては、ユニオニスト=ロイヤリスト、ナショナリスト=共和主義ということになる(共和主義とは、とにかく王政に反対する立場といっていい)。日本では天皇制賛成(ロイヤリスト)=ナショナリスト(民族派)=右翼になるが、その「常識」はアイルランドではまったく通用しないので注意が必要だ。 よく、新聞などでは、わかっていないのか、わかりやすくしようとしてうそをついているのか知らないが、「北部のプロテスタントとカトリックの対立」という。歴史的に見れば確かに宗教的な対立もあったのだが、正確には「北部のユニオニストとナショナリストの対立」というほうが正しい。プロテスタント同士でもユニオニストはナショナリストを攻撃するし、逆にプロテスタントでもカトリックでもナショナリスト同士は同一歩調をとる。北アイルランド問題は、宗教問題ではない。
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シン・フェイン党さて、一貫してナショナリストの立場をとってきたのが、1905年創設のシン・フェイン党である。平たく言うとIRA(アイルランド共和軍)がナショナリストの軍事部門、シン・フェイン党が合法的政治部門であって、かなり平行した歴史をたどってはいるものの、組織的には別だと考えていい。 このシン・フェイン党もこれまでさんざん分裂を繰り返してきた。有名なのは正統派(オフィシャル)と暫定派(プロヴィジョナル、通称プロヴォス)の分裂であり、現在、新聞などで「シン・フェイン党党首ジェリー・アダムズ」というときには、暫定派(プロヴォス)のことをいっている。 さて、98年5月に国民投票が予定されている「北アイルランド問題の協定」だが、あれは「南部26州と北部6州を分ける」ということが前提となっているから、つまりはユニオニストの主張どおり=イギリスびいきの立場ということになる。 ところが、暫定派シン・フェイン党は、ついにこれに賛成してしまいそうだ。ということは、アイルランドにはナショナリストはいなくなってしまったのか? そうではない。頑固というか何というか、今でもこのナショナリスト=共和主義者の立場を守り続けている一派がいる。それが、1986年に暫定派シン・フェイン党の多数派が南北議会を認めてしまうことに抗議して独立した、「共和主義シン・フェイン党(Republican Sinn Fein)」である。 |
共和主義シン・フェイン党を扱う理由このサイトでは、主にこのRSF(共和主義シン・フェイン党)がウェブ上で公開している資料を翻訳することによって、アイルランドの共和主義者=ナショナリストの歴史と現状を日本に伝えたい。はっきりいって、本邦初公開の資料も多いし、RSFからの最新情報もお届けできると思う。日本にはIRAの本はいくつかあっても、シン・フェイン党としての本はほとんどない。 では、なぜ共和主義者のなかでもRSFを選んだのか。最初の理由は、アイルランドの資料の中で、歴史的な文書なども含めて一番よくそろえているからだった(本当に多い。とうてい全部は訳せそうにないほど)。だが、読んでいくうちに、このRSFが、よくも悪くも、アイルランド共和主義者の立場を一番鮮明に(わかりやすく/頑固に)伝えていることがわかった。そこで、これはおもしろいと思ったわけだ。 アイルランドは「西の果ての国」であり(新大陸は除く)、日出づる国である秋津島から見ればまさに正反対の場所にある。だから、アイルランドの政治状況は、わたしにとって本来「関係のない遠い国の話」である。だから、具体的にRSFを支援するとか、その意見が正しいとかいうつもりはない。ましてや、わたしが共和主義者だという事実もないし、さらに前もっていっておけばわたしはIRAの兵士でもない(あたりまえだ)。 だが、アイルランドに大いに興味関心はある。そして、「RSFみたいなのは頑張ってほしいなあ」というか「アイルランドのなかではRSFが一番ナショナリストとしての筋を通していて好きだなあ」という感情があるのも確かである。何より、わたしの大嫌いな鬼畜米英に闘いを挑んでいるというのがいい(笑)。 というわけで、「北アイルランド和平って、本当にアイルランド問題の解決なの?」という素朴な疑問を呈してみたりする。下手な訳なのでわかりにくいところも多いかと思うが、もしご不満があれば、英語の得意な人はぜひ本家RSFのページを見て、お手本になるような訳を送っていただければ幸いです。誤字脱字誤訳の指摘は甘んじてお受けいたします。もしこれが気に入らない人がいれば、二度とこのページを見ないか、あるいはご自分でこれよりいいページをつくってください。 なお、この日本語版非公式ページを作成するにあたって、RSFの了承を得ていますが、それはあくまでも「組織としての活動とは無関係に」ということになっています。 |
ちなみに。アメリカとアイルランド。暗殺されたJ・F・ケネディ大統領は、歴代アメリカ大統領の中で初のアイルランド移民系であり、しかも初のカトリックであった。いわゆるアメリカのエスタブリッシュメント(権力の中枢勢力)はWASP(White Anglo-Saxon Protestant=白人・アングロサクソン系・プロテスタント)であり、白人ではあってもケルト系カトリックだったJFKは、「大統領であってはならない人物」だったのだ、と考えることができる。これはわかりやすいでしょ。 アメリカを建国した人々の中にはアイルランド系も多いのだが(マッカーサーやマッキントッシュなどMcがつく人、あるいはオブライエンとかオニールとかオハラとかのOがつく人はアイルランド系です)、その中でも南部出身のケルト系カトリックと、北部出身のスコット系プロテスタント(特に清教徒、まれに長老派)はやはり立場が違うのである。 |
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