段階的指示……
...
ここには仮定の状況がある。あなたとわたしが内々に会うことを望んだとしよう。わたしたちは、その会話が監視チームに観察されないよう保証されることを望む。あなたとわたしは場所、日付、時間について前もって合意している。さらに、わたしたちはお互いを見て知っている――お互いに見ればわかる。
第1段階
あなたとわたしは、前もって合意した同じ場所に別々に到着する。特別な場所を固定するのではなく、大体その付近にいることだけを合意している。これは重要な原則だ。これは大きな公園や、住宅地などでいい。その場所は野外で、ビデオ監視カメラがない場所でなければならない。それは望遠レンズを遮蔽するつもりで選ばれるべきだ。
あなたもわたしもその地域をよく知っていなければならない。場所はお互いにとってそこにいても不思議ではないカバーとなるべきだ――公園散歩、住宅地を通ってバス停へ歩く、コンビニなどなど。
第2段階
あなたとわたしは離れた距離から目で接触をする。わたしたちはこれを別々にやるので、他人は気づかない。わたしは、前もって決められていた信号を使って、あなたに気づいたと知らせる。ジャケットを肩に投げ上げたり、サングラスを外してふいたりするだろう。その信号は、不用意に中尉を引きつけない自然な動きでなければならない。
安全第一。 あなたとわたしがお互いに見ても、決して近づいてはならない。これは重要な安全弁である。わたしたちのどちらかが「尻尾を生や」していたとしても、相手にそれを結びつけたくはない。
背景――「尻尾を生やす(grown a tail)」とは、監視下にあるという意味のスパイ用語である。この句は少々不正確だ。というのも、彼らはついてくるだけではなくて、包囲していることも多いからである。
第3段階
あなたがわたしの信号を見たら、あなたはただ立ち去る。それからわたしはあなたについていって、あなたが監視されていないことを確かめる。わたしは注意深く、フローティング・ボックス徒歩監視チームの存在をチェックする。わたしは固定監視ポストにいるエージェントをチェックする。また、フローティング・ボックス自動車監視チームからの支援について調べる。
背景――場合によって、わたしはあなたについていくかもしれないし、並んでいくかもしれないし、前をいくことがあるかもしれない。その目的は、あなたのまわりの監視を検出する場所にいるために近くにいることなのである。もちろん、わたしはいつも距離を置いていて、近づきすぎないようにする。
第4段階
あなたが「きれい」であることが納得できたら、わたしはもう一度合図を送る。たとえば、靴ひもを結び直す。
第5段階
さて、わたしたちは役目を交換するが、このとき単に歩くだけなのはわたしのほうである。あなたは、わたしが監視されていないことを確かめるためについてくる。フローティングボックス徒歩監視、固定監視ポスト徒歩監視、乗り物監視チームの運転支援をチェックする。
さがすべきもの。あなたは慎重に、わたしを待ちかまえている人、並行に動いている人を監視する。わたしの居場所への見通しのいい場所をぶらぶらしている人をチェックする。行ったり来たりして、わたしを監視できる場所に常にいるパターンの行動をとっている人を監視する。わたしの前に誰かを下ろす乗り物を監視する。
第6段階
わたしが「きれい」だとあなたが納得したら、あなたは監視されていないという合図を送る(逆に、監視チームが近くにいると気づいたら、作戦をやめて立ち去ればいい)。
背景――あなたは直感を信じなければならない。何かはっきりしないことがあったとしても、失敗するよりは安全なほうがいいからだ。監視チームがだれかを監視していることを検出することは難しくないと知ると、多くの人は驚く。これはブラントの対監視システムが見事に手際のいいところだ。そして、馬鹿者はそれに対して無力である。
第7段階
あなたとわたしは、いまやお互いに近づいて会うことができる。会話をしたら、次回の密会の日付、時間、場所を決める――密会が監視によって妨げられたときのために、2つのバックアップ計画を立てる。わたしたちが頼みの綱として使う第一の現場で会うことができなかったら、決めて置いた日時に別の場所で会うことになるだろう。
あなたもわたしも、次に会うときの詳細を書いてはいけない。詳細を記憶しなければならない。
背景1――あなたがわたしに渡す文書を持っていても、会う最後の瞬間までこれらの文書をわたしは受け取らないだろう。文書を受け取るとき、すでにわたしは逃走を開始しているだろう。これはわたしたちの対監視手順を破った監視チームによって発見されたり逮捕されたりする機会を減らすことになる。治安機関の行動が速すぎたら、彼らはわたしから何の証拠も得られない。文書はまだ手渡されていないからだ。
背景2――最もよいエージェントは、決して議論と文書をいっしょにしない。文書が手渡されたら、会話は一言もない。接触全体は瞬間でしかない――完全なブラシパスだ。その原則は簡単だ。告発文書を持ってぼんやり立っているのは向こう見ずだということである。
スプーク用語……
北米のスパイは、これを対監視ドライクリーニングのための7段階プロトコールと呼ぶ。ヨーロッパでは"parcours de securite"――「セキュリティ実行」または「セキュリティ回路」と訳せるフランス語である。
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