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東京クーデター
Tokyo Coup d'etat

 
第四章 クーデターの戦略・戦術
 

五 クーデターと戦略・戦術(二)

クーデターの戦略目標

 クーデター勝利への秘訣は、協力者と中立者を多く得ることである。しかも隠密にである。クーデター決行中、孤立化、中立化させるべき政界および政貯要人、諸団体、官僚、一般または特別施設などを十分研究調査し、掌握しておくことが肝心である。また反クーデターにまわると思われる政府団体とその指導者の無力化の下準備をしておく必要もある。

 

政府要人の逮捕

 現政権の指導的人物をすべて逮捕する。それは必ずしも第一線政治家でなくても、影の人物の場合もありうるが、まず閣僚をふくむその側近、顧問もふくむ。これらの者たちは、現政権の強硬な支持者であるとみなしうるし、彼らがクーデターに反対的態度をとる可能性が十分あるので、いっせいに逮捕、監禁してその活動を封じておく必要がある。警察力を牛耳る国家公安委員長および委員、都公安委員、防衛庁長官はもちろん、その協力者なども見のがしてはならない。高級官僚も、ばあいによってはこの中にふくめる。また、政治家でなくても、クーデターに反対すると思われる民間人で、国民の支持の高い者は逮捕、監禁しておくべきである。

 しかし、これらの者たちを殺傷することは極力、回避すべきである。これらの者を殺傷することによって意外な事態をひき起こすばあいもあり(さきの二・二六事件の閣僚殺傷の項参照)、また今回のチリのクーデターで世界的詩人、ノーベル賞受賞者パブロ・ネルターの殺害によって、あの戒厳令下においてさえ異例のデモが起こった(チリのクーデターは異例のもので、政府軍より反体制倒の人数が圧倒的に多い。こうしたクーデターだからこそ、デモに対してもちこたえたのであろう)。

 

マスコミ・電信・電話

 クーデター後にマスコミ機関をおさえることは、死活的重要性をもつ。いま朝日、読売、毎日の発行部数をみると、朝日・読売各六百万、毎日五百万、計千七百万部という厖大なものとなる。テレビ・ラジオにおいては、日本中必ず一家庭に一台はあるとみて、その流される情報の効能は計り知れない。したがって、クーデター側はこれを規制し、新政権の政策の宣伝に利用しなくてはならないことは、当然である。

 しかし、新政権が全放送局を占拠することが困難の場合は、全国網をもつNHKだけでも完全におさえなくてはならない。他局は最低限中立化を要請するか、または内部施設の破壊を行う必要がある。破壊はほんの一部だけでよい。それで放送を不可能にすることができる。また電信・電話局、警察・軍閥係の電話、無線関係、電力供給源(自家発電機も含む)を結ぶ電線を爆破、切断する。

 

交通の要衝と首都出入口の封鎖

 首都出入口の封鎖、占拠、管理は絶対に必要である。政府応援軍の上京を阻止し、都民の治安を維持するため、絶対必要な処置である。また、首都交通の要衝に対する布陣は、暴動などの発生を抑止し、一般治安を確保するためであると同時に、クーデター側の権力を具体的に示す示威でもある。

 

空港・交通施設

 空港はいっさい閉鎖しなくてはならない。空からの政府救援部隊の侵入を阻止するためで、まず滑走路に障害物をおき、三、四名の狙撃兵を配置するか、または滑走路を爆破すればいい。

 国鉄、バスなどは、主として治安上の必要から確保しておくのであって、クーデター側は、警察の大型バスまた自衛隊の装甲車などを使用する。

 首都の三分の二は海と多摩川、荒川に包まれている。これらの橋梁の確保も忘れてはならない。政府友軍が戦車を先頭に突破しようとしたならば、橋梁を爆破すると威圧すればたいがい引き返すものである。空からの攻撃は、都民の被害が大きいためまず実行不可能と思うが、警戒は十分怠らないことである。

 政治権力の象徴である国会議事堂、首相官邸、防衛庁、警視庁の占拠は、国民におおきな心理的影響を与える。

 また東京のおもな公園と広場、主要道路の重要交差点、水道、ガス、変電所などへの配置はいうまでもない。

 

政党・労組・その他の勢力

 わが国における政党は現在自民党以外は、万年野党として存在している。この中でクーデターに反対すると思われる野党に対しては、極力中立化をとらす方向に誘導する。中立化のどうしても不可能の場合は、逮捕、監禁もやむをえないが、このばあいも、殺傷は極力避けることが好ましい。チリのクーデターで、チリ共産党書記長が逮捕されたとき――チリ軍事政権は「軍がクーデターでアジェンデ政権を倒したのは、外国からの極左分子が国内に侵入してきたためだ」とボニージャ内相が特別声明を出した。こうした中で、軍の激しい“左翼狩り”がなおも徹底的に続けられ、逮捕者はすでに四千人を越えたといわれる。“臨時刑務所”にあてられたサンチャゴの二つの国立競技場は、捕われた左翼の人たちでいっぱいになり、陸上の施設に収容しきれなくなって、軍艦を刑務所がわりに使っているという話である――書記長が殺されるのではないかと、世界各国の左翼、進歩的自由主義者から、激しい軍政権へ非難が起こった。そのためもあってか、チリ軍政権では未だ処刑はできないでいるようである。これらの例にみられるように、些少なことからせっかく盛り上げたクーデターの成功を台なしにするような事態は避けるべきである。このことは労組の指導者の場合にもいえる、その処理の適正を誤まると、意外の方面に発展しないとも限らない。血を多く流すということは、クーデター自体が非合理的事件なのであるから、さらに非合理性をかさねる事になって、あまりじょうずなこととはいいかねる。

 右翼団体のうち、暴力右翼でないもの、またクーデターに好意的なものは、積極的に利用すべきであろう。これに反して新左翼の利用は、極力避けるべきである。飼い犬に手を噛まれる結果になるばかりか、クーデターの性格に疑問をはさまれる。

 

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