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東京クーデター
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第四章 クーデターの戦略・戦術 |
五 クーデターと戦略・戦術(二)クーデターの決行クーデターの時期 クーデター側としては、クーデターを行う時期を決定しなくてはならない。それは、決起した際に障害となり、介入してくると思われる機関に対する対応策が完了した時である。しかしこれは、クーデター側の主観的条件である。もちろん、主観的条件が他条件より優先することは、当然のことであるが、その主観的条件を、客観的条件すなわち、選定された攻撃目標を完全に掌握また破砕できた時期に、タイミングを合わせるべきである。それも、できる限り早い時期であるべきである。 これらの事情から、決行の日時はギリギリの線まで決定し難いが、およその線は予定できるため、その準備の運行によって自他共に時期を推測し、決行の近いことを知ってくるてあろう。自他というのは一つはターデター側の隊員であり、他は治安機関である。クーデターの進行の過程で、ぜんぜん計画がもれないというようなことは、いままでの例からみて皆無にひとしい。なんらかの意味で治安関係者に事前にキャッチされているのが普通である。二・二六事件の折りも、青年将校の決行は東京憲兵隊の知るところであった。しかし、当時の東京憲兵司令官が半信半疑で、その通報を握り潰しているうちに二・二六事件が起きたのである。チリのクーデターの場合も、すでに五、六ヵ月も前から噂として流れていたし、また、右翼によるテロ事件は六月以降二〇〇件をこえていた。ソ聯通商代表団、キューバ大使館襲撃事件など瀕発していた。外国でもそうした風説が流れるくらいだから、アジェンデ政権内部では、当然考えられていたのではないかと思われる。しかし、証拠がつかめなかったのか、あるいは治安当局が一網打尽をねらって、タイミングを失ったのかもわからない。いずれにしても、以上のように必ずもれるものであることを覚悟して、確証をつかまれないうちに決行することである。 軍事戦術の一般原則は、正しい場所に軍事力を適用して、完全な一つの歯車として、全軍を前進させることである、クーデターのばあいは、国家の心臓部へ正確な一撃をあたえることである。そのためには、スピードと全力投入(予備兵力を温存しない)が必要である。クーデターは、長い浸透工作期間があっても、決戦段階では数日で結着をつけなくてはならない。押ボタン戦争と同じである。多くの日数を要する事態はすでに敗北する時である。それは日数を要すれば要するほど、クーデター側は、組織の弱体性を暴露し、反対に体制側は体勢を整え、攻撃を増してくるのが、通常であるからである。 またクーデターに参加する各部隊に対して、装備などじゅうぶん整備することを指示しても、占拠の場所、名前など具体的に明示してはならない。また隊員には出発の日時、攻撃目標などその必要に応じて、段楷的に明示するのみで、これらのことは二、三名の指揮者が知っておればよい。それは、隊員の中にあるいは侵入しているかもわからないスパイによる通報を食い止めるために、ぜひ必要なのである。 攻撃は、各目標に対して同時に開始しなくてはならないので、各目標物と各隊所在地の距離によって、出発時間は相違してくるから、あらかじめこれらを測定して出発時間を決めねばならない。各隊が同時に出発すると各隊と目標物との路離の長短によって、同時攻撃ができない攻撃の遅れた隊は、目的物に到着した段階で、充分に準備を整えた体制側によって攻撃される危険がある。 二・二六事件の襲撃時間帯をみてみよう 総理大臣官邸(麹町区永田町二ノ一) 午前五時十分頃襲撃
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襲撃目標の三段階 襲撃目標はあらかじめ決定済みであるが、おおよそ三段楷に分けることが、便利であろう。Aランク・Bランク・Cランクぐらいに分け、Aランクはクーデターの第一目標で、これはぜったいにはずぜないグループである。また襲撃の時間帯は同時になすべきである。Bランク・Cランクの時間帯は、Aランクの終了後でも、間に合うばあいがある。また、人員の都合で、同時襲撃の不可能なばあいも出てくるので、Aランク組の終了した段階であらかじめ指定された場所に逮捕者を連行、そこからまた秘密監視員によって秘密の監禁場所に連行する。この場所は司令部の二、三人しか知らない、クーデター側の勢力範囲にかぎる。 |
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