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承平・天慶の乱
(平将門・藤原純友)

 
源平闘諍録
 
※千葉成胤と平親正の合戦にかむろ姿の妙見菩薩が出現した。

三 妙見大菩薩の本地の事

北条の四郎(北条時政か義時)を始めとして、人々が同じく詮議していたところ「命によって親正を追討させようとなさっているが、親正は小物である。平家の大将軍である大庭三郎景親は相模国にいる。畠山次郎重忠は武蔵国にいる。つまり、急いで計画して彼らを討とう」と言ったところ、「そのとおりである」と(頼朝は)おっしゃった。

また右兵衛佐(頼朝)がおっしゃるには、「侍どもよく聞け。今回、千葉小太郎成胤が初陣に先駆けしたことはめったにないことだ。勲功の賞があるべきだ。頼朝がもし日本国を打ち従えたなら、千葉庄を妙見大菩薩に寄進し奉ろう。そもそも、妙見大菩薩をどうして千葉は崇敬しているのだろうか。また、ご本体はいずれの仏菩薩なのであろうか」と。

常胤がかしこまって申し上げた。

「この妙見大菩薩というのは、人王61代朱雀の御門の御宇、承平5年8月上旬のころに、相馬小次郎将門が、上総介良兼との伯父・甥の関係がよくなく、常陸国で合戦を行なっていたところ、良兼は多勢、将門は無勢でした。常陸国から蚕飼河(こがい)の岸に追いつめられて、将門は河を渡りたいと思ったものの、橋もなく、船もなく、困っていたところ、急に小さな子供が出てきて『瀬を渡そう』と告げたのです。

将門はこれを聞いて蚕飼河を渡り、豊田郡へ越え、河を隔てて戦っていましたが、将門の矢種が尽きた時は、その子供が落ちた矢を拾い取って将門に与え、これを射ました。また、将門が疲れたときには、子供は将門の弓をとって十の矢をまっすぐにして敵を射ましたが、一つも当たらないものはありませんでした。これをみて良兼は『ただごとではない。天の計らいである』と思いながら、その場を退却しました。

将門はついに勝利を得て、子供のまえにひざまずき、袖をかき合わせて『そもそも君はいかなる人でいらっしゃいますか』と問うたところ、その子供は『吾はこれ妙見大菩薩である。昔から今に至るまで、心は勇猛で慈悲が深く正直な者を守ろうという誓いがあった。汝は正しく直く勇敢で剛の者であるがゆえに、汝を守るために来臨したのである。自らは上野の花園という寺にいる。汝、もし志があるならば、速やかに我を迎えとるべきである。吾はこれ十一面観音の垂迹であって、五星の中では北辰三光天子の後身である。汝は東北の角に向かって、わが名号を唱えよ。今後、将門の旗印には千九曜の旗(今は月星と呼ぶ)をかかげよ』といいながら、どこともなく消えていったのです。

そうして将門は使者を花園へ遣わしてこれを迎え、信心をして崇敬しました。将門は妙見の利生をこうむり、五年間のうちに東八か国を打ち従え、下総相馬郡に京を立て、将門親王と号しました。しかし、正直は不正となって、万事の政務を曲げて行ない、神の意志を恐れず、朝廷の威光にもはばかることなく、仏神の田地を奪い取りました。

そのため妙見大菩薩は将門の家を出て、村岡五郎良文のところへ行ってしまいました。良文は伯父でありましたが、甥の将門の養子となったために、さすがによそへは行かずに良文のところへ来られたのです。

将門は妙見に見すてられたため、天慶3年正月22日、天台座主法性房の尊意が横河で大威徳の修法を行なって将門親王を調伏させたところ、紅の血が法性房の行ずる壇上に走り流れました。そこで尊意が急いで悉地成就のよしを奏上させられたところ、御門はおほめになって法務大僧正になさいました。

さて、この妙見大菩薩は、良文から忠頼に移り、嫡子に代々伝わって、常胤に至って七代となります」と。

右兵衛佐はこれを聞いて「まことにめでたいことである。ならば少し頼朝のところへも来てもらおうと思う。どうだろうか」

千葉介が答えるには「この妙見大菩薩は他の仏神と違って、天照大神の三種の神器が国王と一緒にいてはじめて代々の御門を守ってくださっているようなものです。この妙見大菩薩も、将門以来代々伝わり、寝殿の内に安置して、別の家に移したことがありません。あやしい不祥があるようなときは宮殿の内が騒がしくなって異変を示し、示現して氏子を守る霊神です。一族であっても本体は分家に渡していません。ましてや他人には。考えるに、常胤が君の御方のもとに参って仕えているのを、妙見大菩薩のお越しであると思っていただきたいと思います」と申したので、右兵衛佐は頭を傾けてものほしそうにしたので、侍たちは身の毛がよだったように思った。

 

源平闘諍録
軍記物語。

将門の子孫(正確には将門の養子の子孫)を名乗る千葉氏がなぜ妙見菩薩をまつるのか、を語った由来。その事情について、史実とは細部でかなり違いがあるようである。

講談社学術文庫版の原文を現代語訳した。

 

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承平・天慶の乱関連年表
平将門
将門記         10
今昔物語 古事談 源平盛衰記 源平闘諍録
藤原純友
大鏡 今昔物語 古事談
参考リンク

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