オサマ・ビン・ラディン
Osama Bin Ladin:
富+過激論=テロリズム
Yoram Schweitzer,
ICT Research Fellow
1998年5月の終わり、ABCニュースのジョン・ミラーが、億万長者、イスラム原理主義者、国際テロの財政家であるオサマ・ビン・ラディンへのインタビューを行なった。インタビューによって、過激イスラム原理主義者のイデオロギー的世界観への珍しい概観が与えられた。「アフガニスタン市民軍」への影響のため、彼は世界的なテロリズムの後援者の一人となっている。ビン・ラディンはテロの新しい支援者のタイプ――予約もなく、膨大な資源をテロ組織の意のままにさせる裕福な人物――を示している。
テロ支援における宗教
サウジの億万長者で、79-89年のアフガニスタン戦争の退役兵、ビン・ラディンは、「イスラム教信者 対 異教徒」の紛争を考慮するようになった。彼の見方では、「異教徒」は「実用主義」のアラブ民族政権(祖国サウジ・アラビアを含む)と合衆国を含むものであり、それはイスラム教徒の聖地メッカとメディナを奪い、ユダヤ人のパレスチナ征服を補助している、としている。
一連のABCインタビューの中で、ビン・ラディンは、彼の組織、及び彼につながるスンニ派原理主義者グループに典型的な見解を示している。この世界観は、テロ行為の実行を促すだけではなく、宗教的布告によってこういった行為を神聖化するものである。ビン・ラディンにとって、政治的暴力は宗教的訓令の持続なのである。彼は「ジハード」を、異教徒世界よりもイスラム世界を持ち上げるのに必要なものと見ており、テロリズムは彼の敵であるキリスト教徒とユダヤ教徒のモラルが低下しているのだから正当化される、と述べる。彼は続けて、合衆国は世界のテロ行為でも最も非難すべき行為に責任がある、という。たとえば広島と長崎への原爆投下、イラクへの絨毯爆撃など。シオニスト――彼は「シオン賢者のプロトコール」の著者を思わせる用語で引用した――は、ディル・ヤシン(Dir
Yassin)とサブラ(Sabra)とシャティラ(Shatila)の虐殺に責任がある。
宗教的「義務」を果たすため、ビン・ラディンは「ユダヤと十字軍に対するジハードのための国際イスラム戦線(International Islamic
Front for Jihad against the Jews and the Crusaders)を設立した。この年、彼の組織は「ファトワ(fatwa=宗教的支配)」を出版し、「イスラムの土地を征服した異教徒に対する聖戦」はイスラム教徒すべての義務責任であると宣言している。
アメリカに対するテロ
ビン・ラディンの名前は、世界中のテロ攻撃のいくつかとの関係で出ている。その中には、リヤド(95年11月)とダーラン(96年6月)での24人のアメリカ人を含む30人の死を残したものもある。彼はまた、数人の観光客が傷ついたイェミニテ(Yeminite)・ホテル攻撃(92年12月)、エチオピアでのエジプト大統領ムバラク暗殺未遂事件(95年6月)、3人死亡・数百人がけがをした世界貿易センター爆破事件(93年2月)、そして数百人を傷つけたソマリアでのアメリカ軍攻撃とも関与している。
これらの攻撃や、それを実行した人々との関連を語るとき、ビン・ラディンは、テロ支援国家に特有な一種の難解な話し方をする。一方で彼はテロ行為への支援・称揚を示し、公正で正しい行動だと述べながら、同時に、それらの実行についてのすべての責任を否定するのである。
テロ称揚において、ビン・ラディンは非常に薄い関連しか示さない。たとえば、1995年に数十のアメリカ航空機爆破計画でアメリカ法廷に告発された、ラムジ・ヨウセフ(Ramzi
Yousef)の共犯者ワリ・カーン(Wali Khan)の親友であると彼は認めている。しかし、彼はラムジ・ヨウセフを個人的に知らないというのだ。ヨウセフがビン・ラディンの所有するパキスタンのホテルの宿泊客だったというのに。さらに彼は、ヨウセフのテロ活動について知らないし、関与もしていないという。それでいて、「未来のラムジ・ヨウセフ」の出現については予言するのだ。ビン・ラディンは、リヤド爆破の犯人を特に賞賛し、サウジに処刑された4人を「シャヒド(shahid)」すなわち殉教者とし、他の真の信者のための道を示したと述べる。
アフガニン精鋭――終末のための方法
ビン・ラディンは「アフガン精兵(Afghan Veterans)」として知られるイスラム戦士の要員を支援・拡大する重要な役割を演じている。今日、アフガニスタンにいる多くの闘士は、彼に忠誠を誓っている。同時に彼は数多くの国際テロ組織――エジプト、インド、フィリピン、その他――との広いつながりを保っている。これらの組織は、ビン・ラディンの資金、訓練キャンプ、世界中の多くの彼の会社に至るまで、その利便を享受しているのである。これらの会社は、いかなるテロ組織に対しても、兵站・通信支援を行なうだけでなく、カバーを提供することでもひじょうに貴重である。つまり、ビン・ラディンの会社は、テロ支援国家によって準備された外交的特権と同じ役割を果たしているようなのだ。
ビン・ラディンのようなテロ支援「準国家」現象によって提示される主な危険は、彼の見解によれば、神聖なる命令という背景を有する過激論者のイデオロギー――兵士も民間人も、子供も大人も、敵と認識された者への大量虐殺を唱えるイデオロギー――と結びつけられた膨大な財源との連携である。ビン・ラディンの世界観では、全世界が戦場なのである。
訓練され、経験を積んだ戦士集団を伴い、イスラム教の教化に浴した、このような個人の同盟は、潜在的に致命的である。戦士たちが、宗教のための勝利の戦争における、長く、能力を有した精兵となるとき、さらに深刻だ。このような結びつきは、政治的暴力行為と大量破壊のために使われるものである。従来とは違った方法を使うこのような教義を指示する組織が出てくる可能性を排除することはできない。多くの治安アナリストの評価では、この富と過激論者の結合のため、アフガン精兵協会は、今日の国際テロの部隊における最も危険な組織の地位を与えられている。
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